おっしゃる通り、タイは「中所得国の罠(成長の停滞)」や少子高齢化、人件費高騰という深刻な課題に直面しています。しかし、それでも今「投資妙味がある」と言われる理由は、従来の「安価な労働力による組み立て工場」から、「高度な産業集積地」への劇的な脱皮を狙った戦略が評価されているためです。
主な理由は以下の3点に集約されます。
1. 次世代産業のハブ化(「タイランド4.0」とEV)
タイ政府は、産業構造を高度化させる国家戦略「タイランド4.0」を推進しています。
- EV(電気自動車)の集積地: 「アジアのデトロイト」と呼ばれた自動車産業の基盤を活かし、東南アジアのEV生産ハブとしての地位を確立しようとしています。
- 電子・デジタル産業: スマート電子機器やデジタル経済への投資を強化しており、2024年の投資申請額は電気・電子関連が最多となっています。
2. 過去最高の直接投資とインフラ整備
人口減などの逆風がある一方で、世界からの直接投資(FDI)は勢いを増しています。
- 投資申請額の急増: 2024〜2025年にかけてのタイへの投資申請額は過去最高水準(約1兆バーツ規模)に達しており、特に中国やシンガポール、日本からの投資が活発です。
- 東部経済回廊(EEC): チョンブリ県など3県を重点開発区とし、法人税の最大15年免除といった破格の優遇措置で先端企業を誘致しています。
3. 地政学的なリスク分散先(チャイナ・プラス・ワン)
米中対立が激化する中、中国に集中していたサプライチェーンを分散させる「チャイナ・プラス・ワン」の受け皿として、タイの安定したインフラと産業集積が再評価されています。
注意すべきリスク
もちろん、楽観視できない面もあります。
- 家計債務の高止まり: 家庭の借金が多く、国内の消費力が伸び悩んでいます。
- 周辺国との競争: ベトナムやインドネシアに比べると、成長率(予測2.4%前後)は緩やかであり、労働力不足も深刻です。
結論として、今のタイへの投資は「安さ」ではなく、「東南アジアで最も洗練された製造・ハブ機能」という質的な変化に期待が集まっている状態と言えます。

